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採用・定着×離職率

建設業 離職率|
自社の「抜ける穴」を年次・職種別に特定する読み方と打ち手

著者: 三宮 孝太(作業療法士・株式会社DIALOG代表)

建設業の新卒3年以内離職率は、高卒で4割前後という水準が続いています。「うちも若手が続かない」と感じている社長は多いと思います。ただ、業界平均の数字をいくら眺めても、自社の打ち手にはつながりません。本当に必要なのは、自社の離職率を正しく出し、「どこから人が抜けているか」を突き止めることです。

株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、作業療法士として23年間、急性期医療の現場で「人が働き続けられる条件」を見続けてきた知見をもとに、北海道の中小建設業に向けた健康経営支援を提供しています。採用と定着をめぐる一連の記事では、求人票・面接・内定者フォロー・入社後90日といった各接点を扱ってきました。本稿はその土台として、自社の離職を数字で捉え直す方法を整理します。

この記事の要点

データの前提: 建設業の新規学卒者の就職後3年以内離職率は高卒4割前後・大卒3割前後で推移(厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」)。厚生労働省の雇用動向調査では、離職率は年初の常用労働者数を分母に算出されています(出典は記事末尾)。

建設業の新規学卒者 就職後3年以内離職率(令和3年3月卒業者・厚生労働省)

43.2%
新規高卒就職者(建設業)
30.7%
新規大卒就職者(建設業)
35.6%
建設業全体(新規学卒)

出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」。直近の公表でも高卒4割前後の水準が続いています。

まず、自社の離職率を正しく計算する

離職率の話をする前に、自社の数字を正しく出せているかを確認したいところです。離職率は「一定期間の離職者数 ÷ その期間の起点にいた在籍者数」で求めます。年間の離職率なら、分母は年度初めの在籍者数、分子はその1年間に辞めた人数です。

つまずきやすいのは、分母と分子の期間がずれることです。分子に年度途中の入社者の退職を含めながら、分母を年度初めの人数のままにすると、数字が実態より大きく振れます。まず「いつからいつまでの退職を、どの時点の在籍者で割るか」を1つに決めてください。ルールを固定しないと、去年と今年の比較すらできません。

厚生労働省の雇用動向調査も、離職率を年初の常用労働者数を分母として算出しています。公的統計と物差しをそろえておくと、業界の中での自社の位置を見るときにも迷いません。

全体の離職率を眺めても、打ち手は出てこない

自社の離職率が出せたとして、その1つの数字だけでは次の一手は決まりません。全体の離職率は「何割抜けたか」を教えてくれますが、「どこから抜けたか」は教えてくれないからです。

入社1年目で辞めているのか、5年目の中堅が抜けているのかで、打つべき手はまったく違います。前者なら受け入れ体制、後者なら処遇やキャリアの見え方が疑わしくなります。同じ「離職率20%」でも、中身が違えば対策も変わります。

そこで、全体の1つの数字を、次の3つの軸で分解します。過去3年分の退職者を、入社年・職種・退職時の勤続年数で並べ替えるだけで、抜けやすい層が浮かび上がってきます。

分解の軸見えてくること穴があった場合に疑うこと
入社年次別どの年に入った人が残り、どの年の採用が抜けたかその年の採用のミスマッチ・受け入れ体制
勤続年数別入社何年目で辞める人が多いか(1年目・3年目・5年目)初期のオンボーディング / 中堅の処遇・キャリア
職種・配属別特定の職種や班に離職が偏っていないかその現場の労働環境・人間関係・負荷の集中

この分解には、特別なシステムは要りません。入社年・職種・退職日が分かる名簿と、表計算ソフトがあれば十分です。高価な分析ツールを検討する前に、まず手元の名簿を並べ替えてみることをおすすめします。

ここまでの整理

離職率は、計算のルールを固定してから、3つの軸で分解する——この順番が大切です。全体の1つの数字は現状把握には使えても、打ち手には直結しません。入社年次・勤続年数・職種で分けて初めて、「どの層から優先して手を打つか」が決まります。

見えた「穴」に、既存の打ち手を当てる

分解して抜ける層が分かったら、その穴の場所に応じて打ち手を選びます。ここは、これまでの記事で扱ってきた各接点と対応させると分かりやすくなります。

入社直後〜1年目で抜けているなら、受け入れの初期設計を見直す局面です。内定から入社までの空白期間の接点づくりはblog-86(内定辞退の防ぎ方)で扱いました。入社後の最初の90日の設計はblog-51(若手定着90日)で整理しています。1年目の離職が多い会社は、この2つの接点のどこかが抜けています。

3年目・5年目の中堅が抜けているなら、日々の対話とフィードバックの設計を疑います。月1回・10分の個別対話の作り方はblog-80(現場の1on1)で整理しました。中堅の離職は突然ではなく、静かに進みます。定期的に話す場がないと、辞める意思を固めた後で初めて社長が知る、という順番になりがちです。

特定の職種や班に偏っているなら、その現場の負荷や人間関係、採用時の見せ方を見直します。求人票で実態を正しく伝える書き直しはblog-65(求人票の5箇所)で扱いました。心の不調が人手不足を加速させる構造はblog-56(メンタルヘルス離職)で整理しています。入口の期待と現場の実態がずれるほど、その職種の離職は早まります。

健康経営という切り口が、離職率にどう効くか

離職の理由をたどると、体力面の不安、健康を軽んじる職場の空気、休みの取りにくさが、しばしば根っこにあります。急性期医療の現場で患者さんを診てきた経験からも、体の不調を我慢し続けた末に大きく崩れる順番は何度も見てきました。無理を重ねた人がある時点で一気に離れる構図は、現場を問わず共通しているように感じています。

健康診断の事後フォロー、労働時間の適正化、安全衛生の体制づくりは、こうした離職理由に正面から働きかけます。分解して見えた「抜ける穴」が健康や働き方に関わる層なら、健康経営は離職率を下げる打ち手として接続できます。認定そのものを目的にせず、抜ける穴をふさぐ手段として位置づけると、優先順位がつけやすくなります。

もし1つだけ持ち帰るなら

今週、過去3年分の退職者名簿を、入社年と勤続年数で並べ替えてみてください。それだけで「1年目で抜けているのか、中堅が抜けているのか」が見えてきます。抜ける穴の場所が分かれば、打つべき手は自然と絞られます。

よくある質問

Q. 自社の離職率はどう計算すればよいですか?

A. 基本は「一定期間の離職者数 ÷ その期間の起点にいた在籍者数」です。年間の離職率なら、分母を年度初めの在籍者数、分子をその1年間に辞めた人数にそろえます。分母と分子の期間をずらすと数字がぶれるため、社内で計算のルールを1つに固定することが先決です。厚生労働省の雇用動向調査も、入職率・離職率を年初の常用労働者数を分母として算出しています。

Q. 建設業の離職率は高いのですか?

A. 新規学卒者の就職後3年以内離職率で見ると、建設業は高卒で4割前後、大卒で3割前後という水準が続いています(厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」)。全産業と比べて特別に突出しているわけではありませんが、若手の3年以内離職が高めに出やすい業種です。ただし業界平均は自社の打ち手には直結しないため、自社の数字を分解して見ることが重要です。

Q. 全体の離職率だけ見ていてはいけないのはなぜですか?

A. 全体の離職率は「何割抜けたか」は分かっても「どこから抜けたか」を教えてくれないからです。入社1年目で辞めているのか、5年目の中堅が抜けているのか、特定の職種に偏っているのかで、打つべき手はまったく変わります。全体の1つの数字ではなく、入社年次・職種・勤続年数の3つの軸で分解して初めて、優先すべき対策が見えてきます。

Q. 離職率を分解するのに特別なシステムは必要ですか?

A. 必要ありません。入社年・職種・退職日が分かる名簿があれば、表計算ソフトで十分に分解できます。まずは過去3年分の退職者を、入社年次と職種で並べ替えるだけでも「抜けやすい層」が見えてきます。高価な分析ツールを導入する前に、手元の名簿を整えることが最初の一歩です。

Q. 離職率と健康経営はどう関係しますか?

A. 離職の理由には、体力面の不安、健康を軽んじる職場風土、休みの取りにくさが含まれます。健康診断の事後フォロー、労働時間の適正化、安全衛生の体制といった健康経営の取り組みは、こうした離職理由に直接働きかけます。分解して見えた「抜ける穴」が健康や働き方に関わる層であれば、健康経営は離職率の改善に接続できる打ち手になります。

最後に — 北海道の中小建設業様へ

北海道の中小建設業様へ。人手不足が続くほど、1人の離職が経営に響きます。だからこそ、業界平均に一喜一憂するのではなく、自社の離職率を正しく出し、どの層から抜けているかを突き止めることが、遠回りに見えて一番の近道です。抜ける穴の場所が分かれば、入社前・初期90日・通年の対話のどこに力を入れるべきかが決まります。DIALOGは急性期医療23年の臨床知見と制度理解の両面から、自社の離職データの読み解きと、そこから導く健康経営の打ち手づくりを一貫して伴走します。

著者プロフィール

三宮 孝太(株式会社DIALOG代表取締役 / 作業療法士)。作業療法士として23年、急性期医療の現場で「人が働き続けられる条件」を見続けてきました。その臨床知見をもとに、現在は北海道で健康経営・介護予防・ウェルネスの支援に取り組んでいます。

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DIALOGは、北海道の中小建設業を対象に、健康経営優良法人の取得支援に加えて、自社の離職率の分解・読み解きと、そこから導く定着施策の設計をご提案しています。どの層から人が抜けているかを一緒に見立てたうえで、貴社の現状に合わせて一貫して伴走します。

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参考データ

本記事は、著者(作業療法士歴23年・急性期医療従事)の臨床知見と、厚生労働省が公開する一次資料を踏まえた解説です。離職率・入職率は調査年により変動するため、最新の数値は厚生労働省の公表資料をご確認ください。本記事は定着や採用の成果を保証するものではなく、社会保険労務士等の専門家との併用をおすすめします。