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採用×建退共

建退共|
求人票・面接で採用に効かせる見せ方と定着運用の全体像

著者: 三宮 孝太(作業療法士・株式会社DIALOG代表)

「建退共」という言葉は、月間2万7千件を超えて検索されています。ところが、この検索をしている人の大半は経営者ではありません。現場で働く職人さん本人が、「自分の退職金がいくら貯まっているか」を調べているケースがほとんどだと考えられます。経営者が向き合うべきは、その裏側にある問いです。「自社はこの制度を、採用と定着にどう活かせているか」。今回は健康経営ではなく、建設業特有の退職金制度から採用と定着を考えます。

株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、作業療法士として23年間、急性期医療の現場で「人が働き続けられる条件」を見続けてきた知見をもとに、北海道の中小建設業に向けた健康経営支援を提供しています。採用×健康経営シリーズ(blog-64blog-72、全8回)では健康経営優良法人を軸に採用と定着を扱いました。本稿はその延長線上にある、建退共という別制度に特化した回です。

この記事の要点

制度の前提: 建退共は「中小企業退職金共済法」に基づき国が創設した建設業向けの退職金制度です。運営は独立行政法人勤労者退職金共済機構・建設業退職金共済事業本部(出典は記事末尾)。

建退共の加入状況(令和2年度末・国土交通省資料)

17.4万所
加入事業所数
217万人
加入労働者数
92.5万円
一人当たり平均退職金支給額

出典:国土交通省不動産・建設経済局建設業課「建退共制度について」(令和3年9月・建設業退職金共済事業本部資料)

建退共とは何か、なぜ建設業特有なのか

建退共とは、事業主が納めた掛金を国の機構が積み立て、労働者が建設業界を離職するときに本人へ直接支払う退職金制度のことです。法律上は任意加入ですが、公共工事の工事費には掛金相当額が現場管理費としてあらかじめ積算されています。言い換えると、公共工事を受注する時点で、国は建退共への加入を前提にした費用を発注者側に用意しているということです。

掛金は令和3年10月1日以降、日額320円(月額換算6,720円)です。全額を事業主が負担する仕組みで、賃金から天引きするなど労働者に一部でも負担させることはできません。他業種の企業型退職金制度と違い、建退共は「業界を辞めなければ積み上がり続け、転職しても手帳を引き継げば履歴が失われない」という特徴を持ちます。これが、他の業種の退職金制度にはない、建設業特有の位置づけを生んでいます。

納付方法は2つあります。金融機関で証紙(切手のような共済証紙)を購入し、労働者の手帳に貼って消印する「証紙貼付方式」と、電子申請専用サイトで就労実績を入力すると自動的に掛金が充当される「電子ポイント方式」です。国は電子申請への移行を進めていますが、2026年時点でも証紙貼付方式を使う事業所は珍しくありません。

求人票・面接で建退共をどう見せるか

求人票に「建退共加入」と一行書くだけでは、応募者の心はほとんど動きません。blog-65(求人票で書き直す5箇所)でも触れたとおり、制度名の羅列は応募者にとって意味を持たないからです。建退共に限って言えば、効くのは「辞めても消えない」という一点の翻訳です。

よくある書き方採用に効く書き方狙い
建退共加入建設業界の退職金制度(建退共)に加入。転職しても積立が引き継がれます「転職で退職金が消える不安」を先に打ち消す
福利厚生充実入社日から掛金を積立開始。1日320円を弊社が全額負担します負担者が会社であることを明示し、実感のある数字で伝える
退職金制度あり建退共の電子申請を導入済み。就労実績はご自身のスマホでも確認いただけます「見える化」されている安心感を提示する

面接では、blog-68(面接質問5つ)で扱った不安の引き出しに、建退共の話題を1問足すだけで十分です。「前の会社の退職金制度、どうなっていますか」と聞くと、多くの応募者は曖昧にしか答えられません。そこで「建退共は業界共通の制度なので、転職しても積立が引き継がれます」と伝えると、他社との比較材料として明確に残ります。

ここまでの整理

建退共は「加入している」だけでは伝わらず、「辞めても消えない」という翻訳をして初めて採用の武器になります。求人票では負担者と引き継ぎの仕組みを具体的な数字で示し、面接では応募者の「前職の退職金はどうなるか」という不安に直接答える。この2点だけで、他社の求人票との差別化になります。

定着に効かせる運用(証紙貼付・電子申請の見える化)

採用時に建退共を見せて入社してもらっても、その後の運用が本人に見えなければ「ここで働き続ける理由」にはなりません。証紙貼付方式では、手帳への貼付状況を社員自身が確認する機会がほとんどないのが実情です。定着に効かせるには、この運用を意図的に見える形にする必要があります。

運用方法社員への見える化のしかた頻度の目安
証紙貼付方式手帳を年1回本人に確認してもらい、貼付日数を一緒に数える機会を作る年1回(賞与時期等)
電子ポイント方式電子申請専用サイトの就労実績画面を、本人のスマホでも見られるよう案内する入社時に1回案内、以降は本人が随時確認
両方式共通退職金試算(建退共本部の試算ツール)を使い、「今の積立でいくらになるか」を年1回一緒に見る年1回

これは私の見立てですが、証紙貼付方式のまま何年も本人に見せていない事業所は、電子ポイント方式への移行だけで定着面の効果を得やすいと考えています。証紙は物理的に見えないと積立の実感が湧きません。電子申請なら、本人が自分のスマホで「いくら積み上がっているか」を確認できます。これは、賃金明細と同じくらい「働き続ける理由」を具体的に見せる情報になり得ます。

建退共だけで終わらせない、退職金制度の伝え方

建退共は業界共通の下支えであり、貴社だけの独自性ではありません。応募者が本当に比較しているのは、建退共に「上乗せ」して何をしているかです。企業年金や自社の退職一時金制度を併用している場合は、その併用こそが差別化のポイントになります。

公共工事中心の事業所であれば、建退共の加入・履行状況が経審のW点評価に含まれる点も、社員への説明に使えます。「この制度をきちんと運用することが、会社が公共工事を取り続けられる理由にもなっている」と伝えれば、退職金の話が会社の経営基盤の話にもつながります。制度をバラバラに説明するのではなく、採用・定着・経営の3つを1本の線でつなげて語ることが、他社にはない伝え方になります。

もし1つだけ持ち帰るなら

今週中に、求人票の「建退共加入」の一行を「転職しても積立が引き継がれます」に書き換えてください。制度名の羅列を、応募者の不安に応える1文に変えるだけで、同じ制度が採用の武器に変わります。追加のコストはかかりません。

よくある質問

Q. 建退共への加入は義務ですか?

A. 法律上の強制加入ではなく任意加入です。ただし公共工事では加入・履行が経営事項審査(経審)の社会性等(W点)で評価される項目であり、工事費の中に掛金相当額が現場管理費として積算されています。建設業では実質的に準公的な位置づけの制度として扱われています。

Q. 掛金はいくらで、誰が負担しますか?

A. 掛金は令和3年10月1日以降、日額320円(月額換算6,720円)です。全額事業主負担であり、賃金からの天引きなど労働者に一部でも負担させることはできません。証紙貼付方式または電子ポイント方式のいずれかで納付します。

Q. 電子申請とは何ですか?

A. 電子ポイント方式のことです。証紙の購入・貼付・消印作業が不要になり、電子申請専用サイトで就労実績を入力すると自動的に掛金が充当されます。建設キャリアアップシステム(CCUS)と連携させれば、就業履歴の入力の手間もさらに減らせます。

Q. 途中で会社を辞めた場合、掛金や退職金はどうなりますか?

A. 建退共の掛金は事業所ではなく労働者本人に紐づく仕組みです。退職金は建設業界そのものを離職した際に、本人が直接、建退共から受け取ります。転職しても手帳を引き継げば掛金の履歴は失われません。この「業界内で積み上がる」仕組みが、他業種の退職金制度と大きく異なる点です。

Q. 建退共への加入は経審に影響しますか?

A. 経審の社会性等(W点)で、健康保険・厚生年金・雇用保険への加入状況と並び、建退共を含む労働福祉の状況が評価項目に含まれています。加入だけでなく、就労実績に応じた履行(証紙の適正な貼付や電子ポイントの充当)まで含めて評価対象になる点に注意が必要です。

最後に — 北海道の中小建設業様へ

北海道の中小建設業様へ。建退共は、多くの事業所がすでに加入している制度です。だからこそ「加入している」だけでは差別化になりません。求人票の一文と面接の一問、そして証紙貼付・電子申請の見える化。この3つを整えるだけで、同じ制度が採用と定着の武器に変わります。DIALOGは急性期医療23年の臨床知見と制度理解の両面から、貴社の求人票・面接設計にこの視点を落とし込むご提案をします。

著者プロフィール

三宮 孝太(株式会社DIALOG代表取締役 / 作業療法士)。作業療法士として23年、急性期医療の現場で「人が働き続けられる条件」を見続けてきました。その臨床知見をもとに、現在は北海道で健康経営・介護予防・ウェルネスの支援に取り組んでいます。

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建退共を、貴社の求人票・面接設計の武器に翻訳して伴走します

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DIALOGは、北海道の中小建設業を対象に、健康経営優良法人の取得支援に加えて、建退共のような既存制度を採用と定着の見せ方に変えるご提案をしています。求人票の文言、面接での伝え方、証紙貼付・電子申請の運用見直しまで、貴社の現状に合わせて一貫して伴走します。

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参考データ

本記事は、著者(作業療法士歴23年・急性期医療従事)の臨床知見と、国土交通省・厚生労働省・建設業退職金共済事業本部が公開する一次資料を踏まえた解説です。制度の詳細・最新の掛金額・手続き方法は、必ず建退共事業本部または所轄の窓口で最新情報をご確認ください。本記事は経営事項審査の点数や採用成果を保証するものではなく、社会保険労務士・行政書士等の専門家との併用をおすすめします。