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採用×健康経営シリーズ #1

健康経営は、健康のためにやると採用には効かない
——データと公開事例で見る、本当の効き方

著者: 三宮 孝太(作業療法士・株式会社DIALOG代表)

健康経営は、健康のためにやると、採用には効きません。逆説のように聞こえますが、公開データを並べていくと、この順番が見えてきます。「健康のために」ではなく「採用と定着のために」整えた会社ほど、応募と内定承諾と3年定着の数字が動いているのです。

株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、作業療法士として23年間、急性期医療の現場で患者さんの回復を支えてきた知見をもとに、北海道の中小建設業に向けた健康経営支援を提供しています。今日から数週間、「採用 × 健康経営」をテーマにしたシリーズをお届けします。第1回の本記事は、その入口として、公開データと事例で関係性を整理します。

「採用難で困っているが、健康経営は本当に採用と関係があるのか」。この入口の疑問に、経済産業省・東京商工会議所・厚生労働省の調査と、公開されている認定企業データから答えていきます。

この記事の要点

制度の前提: 健康経営優良法人認定制度は経済産業省が所管し、中小規模法人部門には上位区分「ブライト500」が設けられています。2025年認定では中小法人部門の認定数が1万6千を超える規模に達しています(出典は記事末尾)。

この記事で考えたいこと

なぜ「採用 × 健康経営」を今、入口に置くのか

建設業の人手不足は、もう「将来の課題」ではなく現在進行形の経営課題です。国土交通省の資料によれば、建設業の就業者は約36.7%が55歳以上で、29歳以下は12%前後にとどまります(出典:国土交通省「建設業を巡る現状」)。母数が細い若手の取り合いが、毎年起きているということです。

一方で、応募が来ても定着しません。厚生労働省の新規学卒就職者の離職状況によれば、建設業(高卒)の3年以内離職率は42.7%。全産業平均より高い水準が続いています(出典:厚生労働省)。

採用に効くのか、と聞かれた時、私はいつも「採用と定着の両方に効くから、入口として最適です」と答えるようにしています。健康経営は、その両方に同時に効きうる数少ない打ち手だからです。

公開データは、どの指標に効くと言っているか

経済産業省は、健康経営優良法人の取得企業を対象に毎年フィードバックを取っています。直近の調査でも、認定取得企業の多くが「人材確保・離職防止に効果を実感」と回答しています(出典:経済産業省「健康経営度調査フィードバック」)。

東京商工会議所の「健康経営に関する実態調査」でも、健康経営に取り組む企業は、採用や定着に前向きな変化を挙げる比率が、取り組まない企業より明らかに高い結果が出ています(出典:東京商工会議所)。

これは私の見立てですが、効いているのは「応募件数」よりも、その先の「内定承諾率」と「3年定着率」です。応募の段階では会社の中までは見えません。面接・現場見学・入社後の数か月で、健康経営に取り組む会社は「働き続けられそうだ」という体感を返せる。だから残る、という順番だと考えています。

急性期病院で見てきた「人が辞める順番」と、採用の関係

23年間、急性期医療の現場にいて、人の入れ替わりも数多く見てきました。辞める人の多くは、最後の決め手で辞めるのではなく、小さな違和感が積み重なって、ある日「もう無理だ」と言うのです。

新人OTが先輩に「夜勤明けで運転して帰る時、自分が一番危ない」とこぼした朝のことを、今も覚えています。本人は「危ない」と気づいているのに、組織がそれを当たり前として扱っていた。辞める理由は、たいていそういう所に隠れていました。

建設業の現場も、構造はよく似ているのではないでしょうか。給料や上司の問題に見える離職の、もう一段下に、健康と安全への会社の姿勢があります。健康経営とは、そこを言語化して整える作業だと、私は受け止めています。

ここまでのまとめ

※ 中小規模法人部門には上位区分「ブライト500」があり、規模が小さくても差別化に使えます。

「もし1つだけ持ち帰るなら」

もし1つだけ持ち帰るなら、これです。健康経営は「健康のため」に始めると採用には効きにくく、「採用と定着のため」に始めると、結果として健康にも効きます。順番を逆に置くだけで、社内の整え方と求人票・面接での伝え方が変わります。

本シリーズでは今後、求人票での見せ方/面接での伝え方/現場見学での体感設計/健康経営優良法人申請の具体ステップ/公開事例の深掘り、を順に扱う予定です。第1回の今日は、「関係性は確かにある」という入口の確認まででお開きにします。

よくある質問

Q. 健康経営優良法人は本当に採用に効きますか?

A. 公開データを見る限り、効いている兆しがはっきりあります。経済産業省の調査では、健康経営に取り組む企業の多くが「採用への好影響」を実感していると回答しています。東京商工会議所の調査でも、認定取得企業は採用面で前向きな変化を挙げる比率が高い結果です。ただし「認定を取れば応募が増える」のではなく、認定取得の過程で社内が整い、その整いが求人票・面接・現場見学で伝わるから効く、という順番で見るのが妥当だと感じています。

Q. 中小建設業でも効果はありますか。大企業向けの制度では?

A. 中小企業向けに「ブライト500」など独立した区分が設けられており、中小規模でも取得できる設計です。むしろ採用力で大企業に劣りがちな中小ほど、認定の差別化効果は出やすいと考えています。建設業は若手の応募母数が他産業より細いため、同じ条件で並んだ時の「選ばれる側に回る」効きは小さくないと見ています。

Q. 応募が増えるまでにどのくらいかかりますか?

A. 正直に言うと、認定取得の翌月から応募が倍増するような話ではありません。求人票・自社サイト・現場見学などで「健康経営に取り組んでいる会社」と伝える設計を整え、半年から1年ほどかけて効いてくる印象です。次回以降の記事で、求人票での見せ方や現場見学の体感設計を順に扱います。

Q. 定着率にも効きますか?

A. 応募・内定承諾よりも、むしろ定着で効くと感じています。健康経営の取り組みは、健診の事後フォロー・労働時間の見直し・休みやすさといった、若手が辞める手前の不満に直接効きます。新規高卒の3年離職率が建設業で4割を超える現状で、ここを少しでも下げられるなら、採用コスト換算で大きな効果になります。

Q. まず何から始めればいいですか?

A. 認定取得そのものを目的化せず、まず自社の健診結果・残業時間・有給取得率・3年離職率を1枚にまとめて現状を見るところから始めるのが無理のないスタートだと感じています。その1枚があれば、認定の各設問にどう答えられるか、現場の何を整えれば求人票に書ける素材になるかが見えてきます。

最後に — 中小建設業の社長へ

応募が来ない、来ても続かない。この2つは、別々の問題に見えて、根は同じ場所でつながっています。「ここで働き続けられそうだ」と思える材料が、求人票にも面接にも現場にも足りていないのです。

DIALOGには、作業療法士23年の急性期臨床で培った「人が辞める手前の構造を見る目」があります。この目と、健康経営優良法人制度の理解の両方を持って、貴社の採用と定着を伴走します。書類づくりや認定取得そのものをゴールにせず、求人票・面接・現場で伝わる材料を一緒に整えていく。それが私たちの提供価値です。

本シリーズは続きます。次回以降、求人票・面接・現場見学・申請ステップ・公開事例を順に深掘りしていきますので、ぜひ並走していただけたらと思います。

著者プロフィール

三宮 孝太(株式会社DIALOG代表取締役 / 作業療法士)。作業療法士として23年、急性期医療の現場で患者さんの回復と生活を見てきました。その臨床経験をもとに、現在は北海道で健康経営・介護予防・ウェルネスの支援に取り組んでいます。

詳しいプロフィールを見る

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DIALOGでは、北海道の中小建設業を対象に、健康経営優良法人の取得を「採用と定着の打ち手」として設計する伴走支援を行っています。現状の健診結果・残業時間・離職率の1枚整理から、求人票での見せ方、面接・現場見学の体感設計まで、貴社に最適な進め方をご提案します。本シリーズで扱うテーマを、貴社の状況に合わせて先回りでご相談いただけます。

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参考データ

本記事は、著者(作業療法士歴23年・急性期医療)の臨床経験と、各省庁・公的団体の最新公開情報を踏まえた解説です。健康経営優良法人の認定区分・調査項目、新規学卒者の離職率、建設業の就業者統計等は年度ごとに見直されるため、実際の対応にあたっては各省庁・実施団体の最新公表資料を必ずご確認ください。本記事は特定の認定取得や採用成果を保証するものではありません。具体的な人材・労務・健康経営施策の判断については、社会保険労務士・産業医・健康経営認定支援機関等の専門家との併用をおすすめします。