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採用×健康経営シリーズ #3

人手不足倒産が現実になる前に
——中小建設業の社長が今日から下げられる倒産リスク3層

著者: 三宮 孝太(作業療法士・株式会社DIALOG代表)

御社で直近12か月の退職者は何人でしたか。その退職者が「次の人」を引き連れた連鎖の出口は、見えていますか。人手不足倒産という言葉を検索した社長に、最初に投げたい問いはこの2つです。

採用×健康経営シリーズの3回目になります。前回(blog-65)で求人票の書き直し5箇所を整理したのを受け、今回は採用の入口より一段手前——「人手不足倒産」というキーワードで来た経営者の不安に踏み込みます。

2025年度の人手不足倒産は441件で過去最多。そのうち建設業は112件・全体の25.4%でした(出典:帝国データバンク、記事末尾)。建設業は3年連続で最多業種の位置にあります。

この記事の要点

制度・統計の前提: 帝国データバンクの調査によれば、2025年度の人手不足倒産は441件で過去最多、業種別では建設業が112件で全体の25.4%。正社員の人手不足を感じる企業の割合は全産業で52.3%、建設業を含む7業種は6割を上回ります(出典は記事末尾)。

この記事で考えたいこと

人手不足倒産は、いま建設業が一番近い場所にいる

結論から書きます。「人手不足倒産」は遠い言葉ではなく、業種別で見ると建設業が最前列に立っています。2025年の年間倒産でも、2025年度通期でも、建設業が件数で1位です(出典:帝国データバンク)。

正社員の人手不足を感じる企業の割合は、2026年1月時点で全産業52.3%。建設業を含む7業種は6割を上回ります(出典:帝国データバンク)。つまり、人手不足は「感じる側の少数派」ではなく、建設業ではむしろ多数派の状態です。

言い換えると、人手不足倒産の検索結果に並ぶ「危ない会社」は、特殊な経営をしている会社ではありません。母数の中央に立っている、ふつうの中小建設業のことです。だからこそ、上流の構造を3層に分けて見ることに意味があります。

倒産リスクの3層——退職連鎖/採用枯渇/判断力

人手不足倒産は、直接の引き金で言えば「資金繰りの破綻」です。しかしその上流には、ほぼ必ず3つの層が積み重なっています。

第1層:退職連鎖。ベテラン1人の退職が、次の中堅・若手の退職を呼ぶ流れです。1人辞めると現場の負担が他の人に乗り、その人も体力か気力で限界に到達する。健康経営の現場では、この層は「健診の有所見率」「腰痛・睡眠の訴え」「残業時間の偏り」の3つで先に見えます。倒産の3年前から、実は予兆として出ている層です。

第2層:採用枯渇。退職が連鎖し始めた会社は、応募も鈍ります。残った社員が疲れているのは、応募者が現場見学や面接で必ず感じ取るからです。求人票(前回blog-65で扱いました)と現場の体感がずれていると、内定承諾率が静かに下がります。応募数の問題ではなく、承諾と定着の問題が、この層の本体です。

第3層:経営者の判断力低下。退職と採用に追われ続けた社長は、自分の睡眠と判断力を削っていきます。融資・受注・人員配置の判断ミスが重なる時期は、ほぼ例外なく社長自身が一番疲れています。健康経営は、この第3層——社長自身の身体——を含めて扱う打ち手です。

急性期病院で見てきた「連鎖して辞める順番」

これは私の見立てですが、人が連鎖して辞める職場には、必ず順番があります。23年間、急性期医療の現場で、看護師・OT・PTの入れ替わりを数多く見てきました。最初に辞めるのは、いつも「一番真面目に頑張っていた中堅」です。

新人OTが先輩に「夜勤明けで運転して帰る時、自分が一番危ない」とこぼした朝のことを、今も覚えています。中堅が辞めると、その違和感を吸収していた緩衝材が消える。若手は半年以内に、ベテランは1年以内に、続いていきます。

建設業の現場も、構造は重なって見えます。倒産に至る会社で最初に消えるのは、一番現場をまとめていた中堅職人ではないでしょうか。健診で有所見が続いていた、腰の訴えがあった、残業が偏っていた——その兆しは、健康経営の素材で先に見える層です。

ここまでのまとめ

※ 健康経営は資金繰りに直接効きません。効くのは上流の3層。順番を取り違えなければ、今日から1層ずつ下げられます。

「もし1つだけ持ち帰るなら」

もし1つだけ持ち帰るなら、これです。来週月曜の朝、直近12か月の退職者の氏名・退職月・退職理由を、A4用紙1枚に書き出してください。そこに、同じ12か月の健診有所見率と残業時間の月別グラフを並べる。3層のうち第1層が、その1枚だけで輪郭を持って立ち上がります。

本シリーズは続きます。次回(第4回)は「面接の30分で何を伝えると応募者が腹落ちするか」を予定しています。退職連鎖が見え始めた会社が、採用面接の場で何を変えるべきか、を整理します。

よくある質問

Q. 人手不足倒産は本当に増えているのですか?

A. 帝国データバンクの調査によれば、2025年度の人手不足倒産は441件で過去最多を更新しました。業種別では建設業が112件・全体の25.4%で最も多く、3年連続で過去最多を更新しています。

Q. 健康経営は人手不足倒産のリスクを下げますか?

A. 経済産業省の健康経営度調査では、認定企業の多くが採用と定着への好影響を実感していると回答しています。倒産の直接要因は資金繰りですが、その上流にある退職連鎖と採用枯渇に対しては、健康経営が現実的な打ち手として機能する場面があります。

Q. 中小建設業はどの倒産リスクから手を付けるべきですか?

A. 順番としては、まず「退職連鎖の見える化」が起点になりやすいです。直近12か月の退職者と理由を1枚に書き出し、健診・残業・腰痛訴えのデータと並べる。そこから採用枯渇対策・経営者自身の判断力維持に範囲を広げていくのが、無理のない順序です。

Q. 建設業の人手不足はどの程度深刻ですか?

A. 帝国データバンクの2026年1月調査では、正社員の人手不足を感じる企業の割合は全産業で52.3%ですが、建設業を含む7業種は6割を上回ります。建設業は他業種より一段高い水準で人手不足感が続いています。

Q. 健康経営優良法人を取れば倒産は防げますか?

A. 認定取得そのものが倒産を直接防ぐわけではありません。重要なのは、認定取得の過程で社内の退職連鎖・健診事後フォロー・残業時間の見える化が進むことです。倒産リスクが下がるのは、その整いの効果として捉えるのが妥当です。

最後に — 中小建設業の社長へ

人手不足倒産は、ある日突然落ちてくる雷ではありません。退職連鎖・採用枯渇・社長の判断力低下という3層が、3年ほどかけて静かに積み重なって起きるものです。逆に言えば、3年あれば3層とも下げられます。

DIALOGには、作業療法士23年の急性期臨床で培った「人が連鎖して辞める順番を見る目」と、健康経営優良法人制度の理解があります。退職者リストと健診データを並べる1枚から、貴社の3層を一緒に見える化していきます。それが私たちの提供価値です。

本シリーズは続きます。第4回「面接で何を伝えるか」も、ぜひ並走していただけたらと思います。

著者プロフィール

三宮 孝太(株式会社DIALOG代表取締役 / 作業療法士)。作業療法士として23年、急性期医療の現場で患者さんの回復と生活を見てきました。その臨床経験をもとに、現在は北海道で健康経営・介護予防・ウェルネスの支援に取り組んでいます。

詳しいプロフィールを見る

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DIALOGでは、北海道の中小建設業を対象に、退職連鎖・採用枯渇・経営者の判断力という人手不足倒産の上流3層を、健康経営の素材で見える化する伴走を行っています。直近12か月の退職者リストと健診・残業データから、貴社の現在地と次の一手をご提案します。本シリーズで扱うテーマを、貴社の状況に合わせて先回りでご相談いただけます。

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参考データ

本記事は、著者(作業療法士歴23年・急性期医療)の臨床経験と、各省庁・公的機関・民間調査機関の最新公開情報を踏まえた解説です。人手不足倒産の件数・割合、人手不足を感じる企業の割合、健康経営優良法人の認定区分等は調査時点ごとに見直されるため、実際の経営判断にあたっては各機関の最新公表資料を必ずご確認ください。本記事は特定の倒産回避や経営改善の成果を保証するものではありません。具体的な人材・労務・財務の判断については、社会保険労務士・税理士・産業医・健康経営認定支援機関等の専門家との併用をおすすめします。