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定着×メンター制度

メンター制度|
「先輩がついている」だけでは、新人の定着にはつながらない

著者: 三宮 孝太(作業療法士・株式会社DIALOG代表)

メンター制度を導入した——それだけで安心していませんか。「先輩をつけたのだから、あとは本人次第」という捉え方は、制度の本質を見誤っています。目的が曖昧なまま先輩を割り当てただけの制度は、面談が雑談で終わったり、いつの間にか行われなくなったりしがちです。教育コストをかけて制度を作っても、機能していなければ意味がありません。

株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、作業療法士として23年間、急性期医療の現場で新人スタッフの相談役を担ってきた知見をもとに、中小企業の健康経営・人材定着支援を提供しています。blog-106(自己効力感)では成功体験の設計を扱いました。本稿はその成功体験を支える、相談相手の仕組みそのものに焦点を当てます。

この記事の要点

背景の前提: 厚生労働省は「メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」を公表しており、業務上の指示命令系統とは別に相談相手を置くことを制度の要としています(出典は記事末尾)。

メンター制度の要点と、形骸化を防ぐ視点

直属上司とは別
メンターに求められる立ち位置
定期的な面談
「割り当てて終わり」にしない運用の要
0
外部サービスを使わず自社で行う場合の追加費用

出典:厚生労働省「メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」

「先輩をつける」だけで終わる制度の落とし穴

メンター制度は、仕事の指示・命令を行う直属の上司とは別に、社内の先輩社員が相談役となる制度です。厚生労働省のマニュアルでも、業務評価の権限を持つ上司には本音の相談がしにくい場合があるとして、指示命令系統とは別のラインに相談相手を置くことを制度の本質として位置づけています。

ところが、「先輩と新人を組ませる」ことだけを決めて終わってしまう会社は少なくありません。目的が共有されないまま任されたメンターは、何を話せばよいか分からず、面談は雑談に終始しがちです。定期的な検証がなければ、制度は形だけのものになり、時間が経つほど効果は薄れていきます。

名ばかりメンターで終わらせない3つの実務

大掛かりな制度設計をやり直さなくても、3つの実務から立て直せます。

実務内容目的
目的を言葉にするメンターに何を期待するか(業務指導ではなく相談相手)を明確に伝える役割の曖昧さをなくす
面談の時間を確保する「時間が空いたら」ではなく、定期的な時間をあらかじめ決める面談が自然消滅するのを防ぐ
技能指導と切り分けるメンターは相談役に徹し、技能指導は別の担当者に任せる話しやすい人をメンターに選べるようにする

ここまでの整理

3つの実務に共通するのは、「先輩をつける」ことと「相談相手を機能させる」ことを分けて考えることです。制度を作ることと、制度が機能することの間には、意識的な運用が必要です。

技能が高い人が、良き相談相手とは限らない

これは私の見立てですが、急性期病院でも、経験年数が長いスタッフが必ずしも新人の相談相手として最適とは限りませんでした。技能の高さと、話を聞く姿勢の丁寧さは別の資質です。blog-106(自己効力感)で扱った小さな成功体験の設計も、安心して話せる相手がいて初めて機能します。メンター選びでは、技能ではなく「話しやすさ」を基準にする発想も有効です。

もし1つだけ持ち帰るなら

今週、「今のメンター制度で、実際に定期的な面談が行われているか」を1件だけ確認してください。特別な準備は要りません。この確認が、形骸化に気づく最初の一歩になります。

よくある質問

Q. メンター制度とは何ですか?

A. 仕事の指示・命令を行う直属の上司とは別に、社内の先輩社員が新入社員や後輩社員の相談役となる制度です。厚生労働省のマニュアルでも、業務上の上下関係とは切り離した相談相手を用意することが制度の要とされています。

Q. なぜ「先輩をつける」だけでは不十分なのですか?

A. 目的が曖昧なまま先輩を割り当てただけでは、面談が雑談で終わったり、そもそも面談自体が行われなくなったりしがちです。制度として機能させるには、目的の共有と定期的な検証が欠かせません。

Q. メンターは直属の上司が兼ねてはいけないのですか?

A. 業務評価の権限を持つ直属の上司には、本音の相談がしにくい場合があります。厚生労働省のマニュアルでも、指示命令系統とは別のラインに相談相手を置くことが制度の本質として位置づけられています。

Q. メンターに向いているのは、どんな人ですか?

A. 技能が最も高い人である必要はありません。話を聞く姿勢があり、新人の頃の戸惑いを覚えている人の方が向いています。技能指導は別の担当者に任せ、相談役としての役割に絞る運用も有効です。

Q. 小規模な会社でも実践できますか?

A. はい。大掛かりな制度設計は不要です。まずは「誰が相談役か」を明確にし、定期的に話す機会を決めるだけでも、名ばかりメンターから抜け出す一歩になります。

最後に — 人材課題を抱える中小企業の経営者様へ

人材課題を抱える中小企業の経営者様へ。「先輩をつける」ことと「相談相手を機能させる」ことは別の話です。目的を言葉にする・面談の時間を確保する・技能指導と切り分けるという3つから着手することが、名ばかりメンターから抜け出す近道です。DIALOGは急性期医療23年の相談・支援の知見をもとに、貴社の人材育成にこの視点を落とし込むご提案をします。

著者プロフィール

三宮 孝太(株式会社DIALOG代表取締役 / 作業療法士)。作業療法士として23年、急性期医療の現場で「人が働き続けられる条件」を見続けてきました。その臨床知見をもとに、現在は健康経営・介護予防・ウェルネスの支援に取り組んでいます。

詳しいプロフィールを見る

人材育成の仕組みに関するご相談から、健康経営優良法人の取得支援まで伴走します

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DIALOGは、人材の定着・技能承継に課題を抱える中小企業を対象に、健康経営優良法人の取得支援をご提案しています(建設業向けには「ぱとす」による伴走支援も行っています)。メンター制度の運用など、本記事のような視点も踏まえてご相談に応じます。貴社の業種・現状に合わせてご相談ください。

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参考データ

本記事は、著者(作業療法士歴23年・急性期医療従事)の臨床知見と、厚生労働省が公開する一次資料を踏まえた解説です。同マニュアルは女性社員の活躍推進を主な目的として作成されていますが、メンター制度の基本的な仕組みは新入社員育成全般に応用可能な内容です。制度設計は各社の状況により異なるため、本記事は一般的な考え方の整理としてご参照ください。