業務上疾病のおよそ6割を、腰痛が占めています。これは意外に大きな数字ではないでしょうか。重量物を扱う現場だけの問題だと思われがちですが、厚生労働省の指針では、腰痛の発生要因として姿勢や動作そのものが挙げられており、重い物を持つかどうかだけが問題ではありません。
株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、作業療法士として23年間、急性期医療の現場で姿勢・動作の評価と改善に取り組んできた知見をもとに、中小企業の健康経営・人材定着支援を提供しています。blog-104(座りっぱなし)では座位行動という要因を扱いました。本稿は姿勢そのものに焦点を当てます。
この記事の要点
- 休業4日以上の職業性疾病のうち、腰痛は約6割を占める(厚生労働省調査)
- 腰痛の発生要因は動作・環境・心理社会的・個人的要因の4つに分類される
- 中腰やひねりを伴う姿勢は、重量物の有無にかかわらず腰に負担をかける
背景の前提: 厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」は、作業管理・作業環境管理・健康管理・労働衛生教育の4本柱による腰痛予防を求めています(出典は記事末尾)。
腰痛が占める割合と、予防の4本柱
出典:厚生労働省「業務上疾病発生状況等調査」「職場における腰痛予防対策指針」
「重い物を持つ現場」だけの問題ではない理由
腰痛というと、重量物を運ぶ建設業や運送業をイメージしがちですが、厚生労働省の腰痛予防対策指針では、発生要因を動作要因・環境要因・心理社会的要因・個人的要因の4つに分類しています。中腰の姿勢、体をひねりながらの作業といった動作要因は、重量物の有無とは関係なく腰に負担をかけます。
この視点に立つと、腰痛は特定の業種だけの課題ではなくなります。デスクワークで前かがみの姿勢が続く、書類を取るために不自然な体勢でひねる、といった日常的な動作にも、同じ発生要因が潜んでいます。
姿勢改善を仕組み化する3つの実務
指針が示す4本柱を、日常業務に落とし込む形で実践できます。
| 実務 | 内容 | 対応する管理 |
|---|---|---|
| 作業姿勢の確認 | 中腰・ひねりを伴う作業がないか、実際の様子を確認する | 作業管理 |
| 休憩中のストレッチ習慣 | 短時間でもよいので、腰・背中を伸ばす時間を朝礼や休憩に組み込む | 健康管理 |
| 姿勢についての声かけ・教育 | 正しい持ち方・座り方を、朝礼や新人教育で伝える | 労働衛生教育 |
ここまでの整理
3つの実務に共通するのは、腰痛を「体質」や「歳のせい」で片付けないことです。動作要因は本人の努力だけでなく、作業の設計・環境・教育によって軽減できる部分が大きいというのが指針の考え方です。
姿勢の崩れは、本人が最も気づきにくい
これは私の見立てですが、急性期病院のリハビリでも、患者さん自身が自分の姿勢の崩れに気づいていることはほとんどありませんでした。慣れた動作ほど、無理な姿勢でも「いつも通り」にこなせてしまうため、痛みが出て初めて問題が表面化します。だからこそ、本人任せにせず、周囲が具体的に姿勢を確認する仕組みが必要になります。
もし1つだけ持ち帰るなら
次の作業中、「中腰やひねりを伴う場面」を1つ思い浮かべてください。特別な設備は要りません。この1つに気づくことが、姿勢改善を仕組みにする最初の一歩になります。
よくある質問
Q. 腰痛は本当にそれほど多いのですか?
A. 厚生労働省の業務上疾病発生状況等調査では、休業4日以上の職業性疾病のうち、腰痛が約6割を占めるとされています。重量物を扱う現場に限らず、幅広い業種で発生している職業性疾病です。
Q. 腰痛の原因は重い物を持つことだけですか?
A. 厚生労働省の職場における腰痛予防対策指針では、腰痛の発生要因を動作要因・環境要因・心理社会的要因・個人的要因の4つに分類しています。中腰やひねりを伴う姿勢そのものが、重量物の有無にかかわらず腰に負担をかけます。
Q. 姿勢改善は現場作業員だけに必要なものですか?
A. いいえ。中腰やひねりを伴う動作は現場作業に多い一方、長時間同じ姿勢を続けるデスクワークにも共通する負担があります。業種や職種を問わず、姿勢という観点は共通して見直す価値があります。
Q. 姿勢改善のために、外部の専門家を呼ぶ必要がありますか?
A. 最初の一歩としては不要です。作業姿勢を写真で確認する、休憩中に軽いストレッチを入れるなど、既存の業務の合間にできることから始められます。継続的な取り組みにする段階で専門家の関与を検討するとよいでしょう。
Q. 小規模な会社でも実践できますか?
A. はい。厚生労働省の指針が示す作業管理・作業環境管理・健康管理・労働衛生教育の4本柱は、規模の大小にかかわらず適用できる考え方です。特別な設備投資がなくても着手できます。
最後に — 人材課題を抱える中小企業の経営者様へ
人材課題を抱える中小企業の経営者様へ。腰痛を「体質」「歳のせい」で片付けず、作業姿勢の確認・休憩中のストレッチ習慣・姿勢についての教育という3つから着手することが、業務上疾病の6割を占める腰痛への現実的な対策です。DIALOGは急性期医療23年の姿勢・動作評価の知見をもとに、貴社の健康経営にこの視点を落とし込むご提案をします。