人手不足だから採用を頑張る——多くの経営者が向き合う課題ですが、実はもう一つ見落とされがちなリスクがあります。正社員が「不足している」と回答した企業は約6割、現場の技能労働者の不足はさらに深刻です。代わりがいないこの状況で、評価に納得できない優秀な人材から先に辞めていくとしたら、それは採用難と同じくらい重い経営課題です。
株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、作業療法士として23年間、急性期医療の現場で患者さんの状態を評価し、根拠とともにフィードバックを伝え続けてきた知見をもとに、中小企業の健康経営・人材定着支援を提供しています。blog-100(ジョブローテーション)では属人化という事業継続リスクを扱いました。本稿は評価という、別の角度から定着リスクに焦点を当てます。
この記事の要点
- 正社員が「不足している」と回答した企業は約6割、現場の技能労働者不足は67.5%に上る
- 優秀な人材ほど転職市場での選択肢が多く、評価への不満は離職に直結しやすい
- 評価制度を整備し賃金・離職率の改善を達成すると、国の助成金を活用できる
背景の前提: 評価結果そのものより、評価の理由が説明されないことへの不満が、納得感の欠如につながりやすいとされています(出典は記事末尾)。
人手不足の実態と、評価制度整備の助成金
出典:労働政策研究・研修機構「人手不足等をめぐる現状と働き方等に関する調査」、厚生労働省「人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース)」
「代わりがいない」からこそ、評価の不満は重い
人手不足の状況では、離職した社員の穴を外部からすぐに埋めることが難しくなります。労働政策研究・研修機構の調査でも、正社員が「不足している」と回答した企業は約6割、現場の技能労働者の不足は67.5%に上ります。この状況で、評価に納得できない優秀な人材が離職を選ぶと、単に一人が減る以上の打撃になります。優秀な人材ほど転職市場での選択肢が多く、不満を抱えたまま働き続ける理由が少ないためです。
評価への不満は、多くの場合、評価結果そのものよりも「なぜその評価なのか」が説明されないことから生まれます。低い評価であっても、理由が納得できれば不満は和らぎますが、理由が分からないまま結果だけを受け取ると、不信感が積み重なります。
評価の納得感を高める3つの実務
大掛かりな制度を一から作らなくても、3つの実務を意識するだけで納得感は変わります。
| 実務 | 内容 | 効果 |
|---|---|---|
| 評価基準の言語化 | 何を見て評価しているかを、事前に言葉にして共有する | 結果を受け取る前から納得の土台を作る |
| フィードバック面談での理由説明 | 評価結果を伝える際、具体的な根拠とともに説明する | 「なぜ」への疑問を残さない |
| 助成金を活用した制度整備 | 人材確保等支援助成金の要件に沿って評価・賃金制度を見直す | 費用負担を抑えながら制度化を進める |
ここまでの整理
3つの実務に共通するのは、評価を「結果を伝える場」ではなく「理由を伝える場」として扱うことです。人手不足で代わりが少ない今こそ、この一手間が優秀な人材の離職を防ぐ分かれ目になります。
評価は、結果より過程を丁寧に伝える技術
これは私の見立てですが、急性期病院で患者さんに状態を伝える際も、結果だけを告げると不安や不信を招きやすく、どう評価したのか過程を丁寧に説明すると、たとえ厳しい内容でも受け止めてもらいやすくなりました。人事評価も同じ構造だと感じています。結果を丁寧に説明する技術は、特別な資格がなくても身につけられます。
もし1つだけ持ち帰るなら
次の評価面談で、結果を伝える前に「何を見てこの評価にしたか」を先に説明してください。特別な制度は要りません。この順番の変更だけで、評価への納得感は大きく変わります。
よくある質問
Q. なぜ優秀な人ほど評価への不満で辞めやすいのですか?
A. 優秀な人材ほど転職市場での選択肢が多く、今の評価に納得できなければ他社という選択肢を具体的に検討できます。人手不足の今、代わりを採用することが難しいからこそ、優秀な人材から先に離職するリスクは経営に直結します。
Q. 評価への不満は、何が原因で生まれるのですか?
A. 評価結果そのものより、評価の理由が説明されないことへの不満が大きいとされています。低い評価自体よりも、「なぜその評価なのか」が分からない状態が、納得感の欠如につながります。
Q. 評価制度を整備すると使える助成金はありますか?
A. 厚生労働省の「人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース)」があります。生産性向上に資する人事評価制度と賃金制度を整備し、賃金2%以上増加・離職率低下等を達成すると、制度整備助成と目標達成助成を受けられます。
Q. 評価制度がなくても、評価の納得感は高められますか?
A. はい。大掛かりな制度がなくても、評価基準を言葉にして共有し、フィードバック面談で理由を説明するだけで納得感は変わります。制度の精緻さより、説明責任を果たす姿勢の方が効果的な場合があります。
Q. 人手不足は本当にそれほど深刻なのですか?
A. 労働政策研究・研修機構の調査では、正社員が「不足している」と回答した企業は約6割、現場の技能労働者の不足は67.5%とされています。多くの業種で人材の代わりを見つけることが難しい状況が続いています。
最後に — 人材課題を抱える中小企業の経営者様へ
人材課題を抱える中小企業の経営者様へ。人手不足の今だからこそ、評価の納得感は採用と同じくらい重要な経営課題です。評価基準の言語化・フィードバック面談での理由説明・助成金を活用した制度整備、この3つは特別な体制がなくても着手できます。DIALOGは急性期医療23年の評価・フィードバックの知見をもとに、貴社の評価制度の納得感向上にこの視点を落とし込むご提案をします。