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定着×組織行動

ジョブローテーション|
「あの人にしかできない」が、会社を止めるリスクになる理由

著者: 三宮 孝太(作業療法士・株式会社DIALOG代表)

意外に思われるかもしれませんが、中核人材が「不足している」と回答した中小企業は7割を超えています。人手不足というと採用の話に目が向きがちですが、実は今いる人材の中に潜むリスクも見過ごせません。「あの人にしかできない」業務が1つでもあれば、その人が抜けた瞬間、会社は止まります。

株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、作業療法士として23年間、急性期医療の現場で「一人が抜けても機能し続けるチーム」の作り方を見続けてきた知見をもとに、中小企業の健康経営・人材定着支援を提供しています。blog-99(適材適所)では配置の意思決定を扱いました。本稿はその先にある、業務の分散という事業継続の視点に焦点を当てます。

この記事の要点

背景の前提: ジョブローテーションは従業員に複数の業務・部署を計画的に経験させる人事施策で、視野を広げる目的だけでなく、業務の属人化を防ぐ効果があります(出典は記事末尾)。

属人化リスクと、多能工化の実例

7割超
中核人材が「不足している」と回答した中小企業の割合
1
属人化した業務が止まるのに必要な離脱人数
0
業務の棚卸しと分散に必要な追加投資(仕組みの見直しのみ)

出典:中小企業庁「2024年版中小企業白書」、中小企業庁「中小企業・小規模事業者の人材活用事例集」

属人化は、なぜこれほど見過ごされやすいのか

属人化は、業務がうまく回っている間は問題として認識されません。むしろ「あの人に任せておけば安心」という信頼として受け止められます。危険信号が表面化するのは、その人が急な病気・けが・退職で不在になった瞬間です。中小企業庁の中小企業白書では、中核人材が「不足している」と回答した企業が7割を超えており、代わりの人材を外部からすぐに確保することも難しいのが実情です。

中小企業庁の人材活用事例集では、スキルマップの作成をきっかけに多能工化を進め、業務効率化と生産性向上を実現した事例が紹介されています。誰が何をできるかを可視化することが、属人化を解消する出発点になります。

事業継続リスクを下げる3つの実務

ジョブローテーションは、全業務を均等に回す必要はありません。優先順位をつけて、無理なく始められます。

実務内容目的
属人化業務の洗い出し「その人が抜けたら困る業務」をリストアップするリスクの所在を可視化する
優先順位をつけたローテーション事業継続上重要な業務から順に、複数人が担当できる状態を作る専門性を保ちつつリスクを分散する
引き継ぎの型を作る担当者交代時に使う簡易マニュアルを1業務ずつ整備するローテーションの負担を減らし継続させる

ここまでの整理

3つの実務に共通するのは、「今は問題がない」業務ほど注意深く見ることです。属人化は順調に見える業務の中に潜んでいるため、意識的に洗い出さない限り気づけません。

「一人に依存しない」は、本人のためでもある

これは私の見立てですが、急性期病院のリハビリチームでも、特定のスタッフにしかできない対応が集中すると、そのスタッフ自身が休めなくなるという副作用がありました。属人化は会社のリスクであると同時に、担当者本人の負担にもなります。業務を分散することは、事業継続だけでなく、その人が安心して休める環境づくりにもつながります。

もし1つだけ持ち帰るなら

今週、「この人が急に休んだら困る業務」を1つだけ書き出してください。特別な制度は要りません。この1つのリストが、事業継続リスクを減らす最初の一歩になります。

よくある質問

Q. ジョブローテーションとは何ですか?

A. 従業員に複数の業務・部署を計画的に経験させる人事施策です。個人の視野を広げる目的で語られることが多いですが、本質的な効果は特定の業務が一人に集中する「属人化」を防ぎ、組織として業務を継続できる状態を作ることです。

Q. なぜ属人化がそれほど大きなリスクなのですか?

A. 属人化した業務は、担当者が病気・けが・退職などで突然抜けた場合、代わりが誰もいない状態になります。中小企業庁の調査では中核人材が「不足している」と回答した企業が7割を超えており、一人の離脱が事業継続に直結しやすい構造があります。

Q. ジョブローテーションを導入すると、専門性が下がりませんか?

A. 全業務を均等にローテーションする必要はありません。事業継続上重要な業務(その人にしかできない作業)を優先的に対象とし、専門性の核となる業務は残す、という選別的な運用が現実的です。

Q. 小規模な会社でも実践できますか?

A. むしろ小規模な会社ほど属人化のリスクは高くなります。人数が少ないと、一人が複数の重要業務を抱えやすいためです。まずは「その人が抜けたら困る業務」を洗い出すことから始められます。

Q. スキルマップとはどう関係しますか?

A. スキルマップは、誰がどの業務をどの程度できるかを一覧化する仕組みです。中小企業庁の人材活用事例集でも、スキルマップの作成をきっかけに多能工化を進めた事例が紹介されています。ローテーション対象の選定にも活用できます。

最後に — 人材課題を抱える中小企業の経営者様へ

人材課題を抱える中小企業の経営者様へ。「今は順調だから」という理由で放置されがちな属人化リスクこそ、今のうちに手を打つ価値があります。属人化業務の洗い出し・優先順位をつけたローテーション・引き継ぎの型づくり、この3つは特別な投資をかけずに今週から始められます。DIALOGは急性期医療23年の臨床知見をもとに、貴社の事業継続リスクを下げる組織づくりにこの視点を落とし込むご提案をします。

著者プロフィール

三宮 孝太(株式会社DIALOG代表取締役 / 作業療法士)。作業療法士として23年、急性期医療の現場で「人が働き続けられる条件」を見続けてきました。その臨床知見をもとに、現在は健康経営・介護予防・ウェルネスの支援に取り組んでいます。

詳しいプロフィールを見る

属人化リスクの洗い出しから、人材定着施策まで伴走します

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DIALOGは、人材の定着・技能承継に課題を抱える中小企業を対象に、健康経営優良法人の取得支援や、属人化を防ぐ組織づくりをご提案しています(建設業向けには「ぱとす」による伴走支援も行っています)。貴社の業種・現状に合わせてご相談ください。

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参考データ

本記事は、著者(作業療法士歴23年・急性期医療従事)の臨床知見と、中小企業庁が公開する一次資料を踏まえた解説です。ジョブローテーションの制度設計は各社の状況により異なるため、本記事は一般的な考え方の整理としてご参照ください。