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定着×組織行動

アンガーマネジメント|
叱ってばかりの現場が、離職と労災を同時に増やす理由

著者: 三宮 孝太(作業療法士・株式会社DIALOG代表)

厳しく叱れば、若手も現場も引き締まるはずです。しかし実際には逆のことが起きます。感情的な指導が続く現場ほど、若手は辞め、事故は減りません。叱ることで正されるはずの現場が、なぜ離職と労災を同時に膨らませてしまうのか。これは精神論ではなく、コストとリスクの構造の問題です。

株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、作業療法士として23年間、急性期医療の緊迫した現場で感情の乱れが判断ミスにつながる場面を見続けてきた知見をもとに、北海道の中小建設業に向けた健康経営支援を提供しています。blog-79(心理的安全性)では「言える文化」の土台を扱いました。本稿はその対極にある、感情的な指導が組織に及ぼすコストに焦点を当てます。

この記事の要点

背景の前提: アンガーマネジメントは1970年代に米国で体系化された心理トレーニングで、怒りの感情をなくすのではなく、その表現方法を選ぶ技術です(出典は記事末尾)。

感情的な指導がもたらす経営リスク

1:29:300
重大事故1件の背後にある軽微事故とヒヤリハットの比率
2022年4月〜
パワハラ防止法の中小企業への義務化
6
怒りの感情がピークに達する目安の時間

出典:ハインリッヒの法則(労働災害の経験則)、厚生労働省「労働施策総合推進法(パワハラ防止法)」

「叱ってばかり」が事故を減らせない構造

労働災害の分野では、1件の重大事故の背景に29件の軽微な事故があり、さらにその背景には300件のヒヤリハットがあるとされています。この300件をどれだけ拾えるかが、重大事故を未然に防げるかどうかを左右します。ところが、感情的に叱る指導が続く現場では、ヒヤリハットを報告すると怒られると学習した部下が、報告そのものをやめてしまいます。300件が表に出なくなれば、重大事故の予兆を見逃すリスクが高まります。

離職の面でも同じ構造があります。萎縮した若手は、疑問や不安を口にできないまま「自分には向いていない」と判断し、静かに辞めていきます。厳しい指導が人を育てるという前提そのものを、一度疑う必要があります。

経営コストとして扱う、3つの実務

アンガーマネジメントは精神論ではありません。特別な研修がなくても、職長・班長クラスに共有できる実務があります。

実務内容効果
6秒ルールの共有怒りを感じた瞬間、反射的に言葉を発する前に6秒待つ感情的な言動のピークをやり過ごす
行動と人格を分ける指摘は「何をしたか」に絞り、「どういう人間か」に触れない指導と人格否定を切り分ける
相談窓口の整備パワハラ防止法に基づき、相談先を明確にして周知する法令遵守と早期の問題発見

ここまでの整理

3つの実務に共通するのは、「厳しさ」と「感情的な言動」を切り分けることです。基準を厳しく保ちながら、伝え方だけを変えることで、離職コストと労災リスクの両方を同時に下げられます。

感情の乱れは、判断ミスに直結する

これは私の見立てですが、急性期医療の現場でも、感情が高ぶった状態での判断はミスにつながりやすいという実感があります。指導する側が感情的になっている瞬間は、指導を受ける側だけでなく、指導する側自身の判断力も落ちています。blog-96(チームビルディング)で扱った「機能するチーム」も、感情に振り回されない土台があってはじめて育ちます。

もし1つだけ持ち帰るなら

次に現場で腹が立った瞬間、言葉を発する前に6秒だけ待ってください。特別な研修は要りません。この6秒が、離職コストと労災リスクを同時に減らす最初の一歩になります。

よくある質問

Q. アンガーマネジメントとは、怒らないようにすることですか?

A. 違います。怒りの感情自体をなくす技術ではなく、怒りをどう表現するかを選ぶ技術です。1970年代に米国で体系化された心理トレーニングで、怒りのピークは長くても6秒程度とされ、その間の反応の仕方を変えることに主眼があります。

Q. なぜ感情的な指導が労災リスクを高めるのですか?

A. 安全管理の分野では、1件の重大事故の背景に29件の軽微な事故、300件のヒヤリハットがあるとされます(ハインリッヒの法則)。感情的な指導で報告しにくい雰囲気ができると、300件のヒヤリハットが表に出なくなり、重大事故の予兆を見逃しやすくなります。

Q. パワハラ防止法は中小企業にも関係しますか?

A. はい。労働施策総合推進法(通称パワハラ防止法)は、2022年4月1日から中小企業にも防止措置が義務化されています。相談窓口の設置や、パワーハラスメントの定義の周知が事業主の義務です。

Q. 厳しく叱ることと、パワハラの違いは何ですか?

A. 業務上必要かつ相当な範囲での指導は該当しません。ただし、優越的な関係を背景に、業務上必要な範囲を超えて精神的・身体的苦痛を与える言動はパワーハラスメントに該当します。感情に任せた指導は、この境界を越えやすいという点に注意が必要です。

Q. 現場ですぐ実践できる方法はありますか?

A. 怒りを感じた瞬間に6秒待つ、指摘は行動そのものに絞り人格に触れない、といった基本を職長・班長クラスに共有するだけでも変化があります。特別な研修や外部講師は必須ではありません。

最後に — 北海道の中小建設業様へ

北海道の中小建設業様へ。「厳しさ」と「感情的な言動」を切り分けることが、離職コストと労災リスクを同時に下げる最短の道です。6秒ルールの共有・行動と人格を分ける指摘・相談窓口の整備、この3つは特別な予算をかけずに今日から始められます。DIALOGは急性期医療23年の臨床知見をもとに、貴社の現場指導のあり方にこの視点を落とし込むご提案をします。

著者プロフィール

三宮 孝太(株式会社DIALOG代表取締役 / 作業療法士)。作業療法士として23年、急性期医療の現場で「人が働き続けられる条件」を見続けてきました。その臨床知見をもとに、現在は北海道で健康経営・介護予防・ウェルネスの支援に取り組んでいます。

詳しいプロフィールを見る

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DIALOGは、北海道の中小建設業を対象に、健康経営優良法人の取得支援に加えて、感情的な指導が招く離職・労災リスクの低減をご提案しています。貴社の現状に合わせて一貫して伴走します。

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参考データ

本記事は、著者(作業療法士歴23年・急性期医療従事)の臨床知見と、厚生労働省が公開する一次資料、および安全管理・心理学分野の一般的な知見(ハインリッヒの法則・アンガーマネジメント)を踏まえた解説です。パワハラ防止法の詳細・最新の要件は厚生労働省の公表資料でご確認ください。