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カスハラ対策・法改正

建設業のカスハラ対策
2026年10月の義務化前に、社長が整える3つの実務

著者: 三宮 孝太(作業療法士・株式会社DIALOG代表)

現場で理不尽な言動にさらされた若手が、誰にも言えないまま静かに辞めていく。建設業には、こうした離職が起きやすい構造があります。

そして2026年10月、その引き金になりやすい「カスタマーハラスメント(カスハラ)」への対策が、法律で事業主の義務になります。言い換えると、顧客や取引先からの行き過ぎた言動から従業員を守ることが、会社の務めとして定められます。

株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、作業療法士として23年間、急性期医療の現場で「人が働き続けられる条件」を見続けてきた知見をもとに、北海道の中小建設業に向けた健康経営支援を提供しています。制度の要件と、現場で実際に起きている現実の両面から、対策を実務に乗せていくのが私たちの役割です。

本記事では、義務化までに社長が整えておきたい3つの実務を、最新の制度資料と現場の視点から整理します。読み終えたあとに、「来週からこう動こう」と判断できる材料をお渡しすることが目標です。

この記事の要点

制度の前提: 改正労働施策総合推進法に基づき、カスハラ対策の措置義務は2026年(令和8年)10月1日施行。具体的な指針は令和8年厚生労働省告示第51号(出典は記事末尾)。

この記事で考えたいこと

なぜ今、建設業でカスハラ対策が義務になるのか

カスハラ対策は、2026年10月1日から、すべての事業主に求められる義務になります。これは労働施策総合推進法の改正によるもので、厚生労働省が事業主の講ずべき措置を指針で示しています(出典:厚生労働省「令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について」)。

カスハラとは、簡単に言うと、顧客や取引先などの言動のうち、社会通念上許される範囲を超えて、従業員の働く環境を害するものを指します。正当な要望やクレームのすべてが対象になるわけではありません。線を越えた言動が問題になります。

建設業の社長から見ると、「うちはサービス業ではないから関係ない」と感じるかもしれません。けれど、施主への引き渡しや元請との折衝の場面では、立場の弱い側が強い言動を受けやすくなります。これは建設業に固有の構図ではないでしょうか。

建設業のカスハラには2つの方向がある

建設業のカスハラは、大きく2つの方向で起きやすいと整理できます。どちらも、特定の誰かが悪いという話ではなく、業界の構造から生まれやすいものです。

1つ目は、顧客・施主から職人への言動です。工期や仕上がりをめぐって、現場の職人が強い言葉を受ける場面があります。発注する側とされる側という立場の差が、言動を強くしやすい面があります。

2つ目は、元請から下請への言動です。重層下請という建設業特有の構造の中で、立場の弱い側が無理を受け入れざるを得ない場面が生まれます。これは個社の問題ではなく、業界全体が長く抱えてきた課題だと感じています。

自社の従業員を守ることと、自社が取引先に対して加害側にならないこと。義務化は、この両面を会社として見直すきっかけになります。

義務化までに整える3つの実務

厚生労働省の指針では、事業主が講ずべき措置の柱が示されています。中小建設業の社長が今から手をつけるなら、次の3つから始めるのが現実的だと感じています。

義務化までに整えたい3つの実務

  1. 方針の宣言と周知——「会社として、職人を理不尽な言動から守る」という方針を社長が決め、現場へ伝える
  2. 相談の受け皿づくり——困った時に誰へ言えばよいかを一つ決め、相談しても不利益がないことを約束する
  3. 事実の記録——いつ・どこで・どんな言動があったかを残す簡単な様式を用意する

※具体的な措置の内容・適用範囲は厚生労働省の指針で定められています。最新の要件は公式資料で必ずご確認ください。

3つに共通するのは、立派な規程をいきなり作ることではない、という点です。まず社長の方針を一言で決め、それを受け止める窓口と記録の様式を用意する。順番に置いていくだけで、義務化の土台はかなり整ってきます。

「我慢する文化」を、制度を機に見直す

私が23年の急性期医療の臨床現場で見てきた限り、人は不調や負担を「迷惑をかけたくない」という気持ちから抱え込みやすいものです。声に出せないまま無理を重ね、ある時に一気に離脱してしまう。そのパターンを何度も見てきました。

建設業の現場でも、理不尽な言動を受けた職人が「これくらい普通だ」と飲み込んでしまう場面は少なくないのではないでしょうか。カスハラ対策の義務化は、その我慢を会社として言語化し、見える形にする機会になると感じています。

認定や規程を整えること以上に、「困ったら言っていい」という空気が現場に生まれること。そこに本当の価値があるのではないかと思っています。

「カスハラ対策」と聞いて身構える前に

「ハラスメント対策」という言葉は、多くの社長にとって、どこか重く聞こえるかもしれません。新しい規程、研修、書類仕事——そう身構える方も多いと思います。

けれど本質は、もっとシンプルなところにあるのではないでしょうか。今いる職人を、理不尽な言動から守り、長く働き続けてもらうこと。そのために社長ができる小さな動きを、続けることです。

明日からできる一歩としては、「会社として職人を守る」という一文を、社長の言葉で決めるだけで十分なスタートになると感じています。その一言が、若手が辞めない現場の入口になります。

よくある質問

Q. カスハラ対策はいつから義務になりますか?

A. 改正労働施策総合推進法に基づき、2026年(令和8年)10月1日から、事業主が雇用管理上の措置を講じることが義務づけられます。具体的な内容は、厚生労働省が公布した指針(令和8年厚生労働省告示第51号)で示されています。詳しくは厚生労働省の最新資料でご確認ください。

Q. 従業員が少ない小さな会社でも対象になりますか?

A. 労働者を雇用していれば、事業主として対象になると整理されています。従業員規模による除外は設けられていない方向です。むしろ社長と現場の距離が近い中小規模の会社の方が、方針を素早く現場に届けやすい面もあるのではないかと感じています。最新の適用範囲は厚生労働省でご確認ください。

Q. 元請からの厳しい指導もカスハラになりますか?

A. 正当な業務上の指示や指導は、それ自体がカスハラに当たるわけではありません。判断の軸は、社会通念上許容される範囲を超えているかどうかです。線引きの考え方は厚生労働省の指針に整理されているため、自社の判断基準を決める際の土台としてご確認いただくのがよいと感じています。

Q. 具体的に何をすればよいのですか?

A. 厚生労働省の指針では、おおむね「会社としての方針を決めて周知すること」「相談に対応する体制を整えること」「被害を受けた従業員に配慮した対応をとること」という柱が示されています。書類を一気に揃えるより、この3つを順番に手をつけていくのが現実的だと感じています。

Q. うちの会社で、何から始めればいいですか?

A. まず「会社として、職人を理不尽な言動から守る」という一文を、社長の言葉で決めることから始めるのがよいと感じています。立派な規程より先に、その一文を朝礼や現場で共有するだけでも、若手の安心感は変わってきます。制度全体を理解しようとせず、社長の宣言から動き出すのが無理のないスタートだと思います。

最後に — 中小建設業の社長へ

カスハラ対策の義務化は、書類仕事の側面が目立ちます。けれど本質は、「現場で働く人をどう守りながら経営を続けるか」を会社として言葉にする作業です。方針を決める過程で、自社が職人をどう扱ってきたかが、社長にとって初めて見える形になります。

DIALOGは、作業療法士23年の臨床経験で培った「人が働き続けられる条件を見抜く目」を持っています。そこにハラスメント対策の最新の制度動向の理解を重ね、対策づくりを伴走します。書類の代行ではなく、義務化のあとも自走できる仕組みづくりが私たちの提供価値です。

まずは、「会社として職人を守る」という一文を決めるところから動いてみてください。そこから先のステップは、私たちと一緒に詰めていきましょう。

著者プロフィール

三宮 孝太(株式会社DIALOG代表取締役 / 作業療法士)。作業療法士として23年、急性期医療の現場で人の生活と仕事を見てきた経験をもとに、北海道の健康経営・介護予防・ウェルネス支援に取り組んでいます。

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DIALOGでは、北海道の中小建設業を対象に、カスハラ対策の方針づくりから、相談体制の整備・現場への定着までを一貫して伴走しています。現場の状況を伺ったうえで、貴社に最適な対策ステップをご提案します。「うちは何から始めればいいか」という入口のご相談から承ります。

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参考データ

本記事は、著者(作業療法士歴23年)の臨床経験と、各省庁の最新公開情報を踏まえた解説です。カスタマーハラスメント対策の措置義務の内容、適用範囲、施行スケジュール等は、今後の指針・通達により詳細が補われる場合があります。実際の対応にあたっては、厚生労働省の最新公表資料を必ずご確認ください。本記事は特定の法的効果を保証するものではありません。具体的な労務・建設業法上の解釈については、社会保険労務士・弁護士等の専門家との併用をおすすめします。