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熱中症 義務化・令和7年確定値

熱中症 義務化|
建設業のWBGT28度・4時間超 中小現場運用ガイド

著者: 三宮 孝太(作業療法士・株式会社DIALOG代表)

278人。これは令和7年に職場で熱中症で運ばれた建設業の労働者数です(厚生労働省・速報値、令和8年6月公表)。うち死亡は15人。製造業を上回り、業種別で最多です。改正労働安全衛生規則の施行初年度であっても、この数字でした。

本記事は、本番夏直前の今、中小建設業の社長と現場責任者が「WBGT28度・1日4時間超」の判定を、改正規則の3義務(報告体制・実施手順・関係者周知)とどうつなげて運用するかをまとめたものです。改正対応の総論はblog-50で整理済みのため、本稿は確定値の読み解きと運用の現実解に絞ります。

株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、作業療法士として23年間、急性期医療の現場で熱中症で運ばれてきた働き盛りの方の搬入直後を担当してきた知見をもとに、北海道の中小建設業に向けた健康経営支援を提供しています。書類整備で止めない運用設計が、私たちの提供価値です。

この記事の要点

制度・統計の前提: 改正労働安全衛生規則(令和7年6月1日施行・厚生労働省所管)による事業者の3義務。対象作業の判定は環境省・厚生労働省の告示および解説に準拠。令和7年確定値は厚労省「令和7年の職場における熱中症による死傷災害の発生状況(速報値)」(6月公表)。

この記事で扱うこと

令和7年確定値が示した、建設業の現実

厚生労働省が令和8年6月に公表した「令和7年の職場における熱中症による死傷災害の発生状況(速報値)」では、業種別で建設業278人・死亡15人と最多でした。建設業労働災害防止協会(建災防)も同時期に注意喚起を出しており、改正規則の施行初年度で業界最多という結果は、現場運用が制度に追いつき切っていないことを示しています。

言い換えると、規則が施行されても、現場で起きる発症の数字は変わらなかった、ということです。書類が整っていても、屋外作業のWBGT判定とその日の作業計画が連動していなければ、人は倒れます。2シーズン目に入る2026年は、運用の精度を1段上げる年です。

改正規則3義務を、中小現場で組み立てる順番

改正労働安全衛生規則(令和7年6月1日施行)が事業者に課したのは、(1)自覚症状の報告体制の整備、(2)発見時の実施手順の作成、(3)関係労働者への周知、の3点です。総論はblog-50で整理しましたが、ここでは中小現場で組み立てる順番に踏み込みます。

第1に、報告体制。「誰に・どの手段で・何分以内に伝えるか」を1枚に書きます。職長の携帯、社長の連絡先、不在時の代理先の3点でかまいません。複雑なフロー図ではなく、詰所と各車両に貼れる連絡網が機能します。

第2に、実施手順。発見時の対応をA4 1枚で4項目に揃えます。涼しい場所への移動、119番判断基準、家族連絡担当、作業中断と現場保全。建災防が公開する様式例も参考になります。

第3に、関係者周知。6月の安全大会で読み合わせ、台帳に全員のサインを集めます。外国人技能実習生には動作で伝える比重を上げる。これで「全員が手順を理解した状態」を文書で示せます。

ここまでの整理

3義務はそれぞれ別ものではなく、「報告→対応→周知」が一本の線になって初めて、現場で発症した時に60秒の動きが出ます。順番は報告体制を先、実施手順を次、周知を最後。逆順で作ると、現場員が手順だけ知って連絡先を知らない状態が生まれます。

WBGT28度・1日4時間超を、朝礼と昼休憩で運用する

対象作業の判定は、WBGT値28度以上または気温31度以上の環境で、連続1時間以上または1日4時間を超える作業です。北海道の屋外作業でも、7月後半から8月にかけて該当する日が出ます。

これは私の見立てですが、判定の運用は実測と予測の二本立てが現実解です。実測は朝礼前と午後の作業再開時に、WBGT測定器(黒球温度計付き)で各現場の代表点を1日2回測る。予測は環境省「熱中症予防情報サイト」の地域別予測値を、朝礼前に必ず1回見る。実測器が手配できない現場は、まず予測値の参照から始めて構いません。

朝礼で「今日の予測WBGTは○度。28度を超える時間帯は11時から15時。この間は30分作業・10分休憩の周期に切り替えます」と社長が宣言する。判定の数字と作業計画の変更を、朝礼の30秒に溶かす。この1セットが、4時間超の判定義務を実務的に満たします。

急性期医療で23年見た、熱中症の臨床的怖さ

急性期病院の救急で23年、夏に熱中症で運ばれてきた働き盛りの方を数多く担当しました。多くに共通していたのは、運ばれてくる直前まで本人もまわりも「いつもの夏バテ」と判断していたことです。

体温が40度を超え、意識が混濁してから救急要請されるまでの30分が、その後の後遺症の有無を分けていました。発症してから救急車を呼ぶ判断が遅れる構造は、現場の心理的なハードルとほぼ同じです。「弱音を吐けない」「迷惑をかけたくない」が、最初の30分を奪います。

だからこそ、報告体制の宣言は社長の言葉で繰り返す必要があります。「少しでも頭が重いと感じたら、私か職長に一声かけてください。続行か休憩かはこちらで判断します」。判断責任を会社が引き取る宣言を、毎朝の朝礼で言い切る。これが3義務を書類で終わらせず、最初の60秒の動きにつなげる方法だと考えています。

もし1つだけ持ち帰るなら

本番夏直前の今、まず朝礼に「今日のWBGT予測値」を1行入れることから始めてください。環境省サイトを30秒見て、28度超の時間帯を朝礼で宣言する。これだけで、3義務のうち報告体制と周知の半分が毎日動き始めます。A4 1枚の手順書は、その並びで来週末までに整えます。

よくある質問

Q. WBGTを毎日測れない現場は、どう判断すればよいですか?

A. 代替手段として、環境省「熱中症予防情報サイト」の地域別WBGT予測値を朝礼前に確認する運用が現実的です。札幌・岩見沢など道央内陸部の数値を見て、28度超が予測される日は午前・午後の作業時間と休憩頻度を朝の段階で決めます。実測器は1現場1台が基本ですが、まず予測値の参照を毎朝の朝礼ルーチンに入れるところから始められます。

Q. 「報告体制」とは、何を整えればOKと判断できますか?

A. 労働者が自分やまわりの体調異変に気づいた時、誰に・どの手段で・何分以内に伝えるかが文書で決まっていれば、最低限の報告体制です。職長の携帯番号、社長の連絡先、不在時の代理先の3点を1枚にまとめ、詰所と各車両に貼ります。複雑なフロー図は要りません。連絡経路が現場員全員に共有されているかが判断の基準です。

Q. 「実施手順」は、どんな様式を作ればよいですか?

A. 発見時の対応手順を、A4 1枚に4項目で揃えれば実務上は機能します。第一に涼しい場所への移動とクールダウン、第二に119番通報の判断基準(意識もうろう/反応が鈍い/水が飲めない)、第三に家族連絡担当、第四に作業中断と現場保全の指示系統。建設業労働災害防止協会(建災防)が公開する様式例も参考になります。

Q. 社員への周知方法は、何をすれば義務を満たしたことになりますか?

A. 周知の義務は、関係労働者全員が手順を「理解した状態」を作ることに目的があります。6月の安全大会で読み合わせ、全員のサインを台帳に集めるのが現実的な落とし所です。新規入場時の教育、外国人技能実習生への動作伝達も含めて、誰がいつ周知を受けたかが残るようにします。

Q. 令和7年に建設業の死亡が15人だったというのは、本当ですか?

A. 厚生労働省「令和7年の職場における熱中症による死傷災害の発生状況(速報値)」(6月公表)によると、業種別で建設業が278人(死亡15人)と最多で、製造業を上回りました。改正規則施行の初年度であってもこの数字であり、2シーズン目の2026年は運用の精度を一段上げる必要があります。

最後に — 中小建設業の社長へ

本番夏まで残り日数は少なく、A4 1枚の手順書も全員サインの台帳も、今週末から動かせる粒度の仕事です。改正規則の3義務は、書類提出の話ではなく、現場で誰かが倒れた最初の60秒に効く設計の話だと、私たちは考えています。

令和7年の確定値で建設業が業種別最多になった事実を踏まえ、貴社の現場規模・世代構成・現場数に合わせて、3義務とWBGT運用を朝礼と詰所に落とし込む伴走をDIALOGはご提案します。総論はblog-50を、安全週間本番週の朝礼設計はblog-73をあわせてご覧ください。

著者プロフィール

三宮 孝太(株式会社DIALOG代表取締役 / 作業療法士)。作業療法士として23年、急性期医療の現場で熱中症をはじめ働き盛りの方の救急搬入直後を担当してきました。その臨床知見をもとに、現在は北海道で健康経営・介護予防・ウェルネスの支援に取り組んでいます。

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DIALOGは、北海道の中小建設業を対象に、改正労働安全衛生規則の熱中症3義務(報告体制・実施手順・関係者周知)と、WBGT28度・1日4時間超の判定運用を、朝礼と詰所に落とし込むところまで一貫して伴走します。令和7年の確定値で建設業が業種別最多となった現実を踏まえ、本番夏に間に合う運用設計を、急性期医療23年の臨床知見をもとにご提案します。

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参考データ

本記事は、著者(作業療法士歴23年・急性期医療従事)の臨床経験と、厚生労働省・環境省・建設業労働災害防止協会が公開する一次資料を踏まえた解説です。引用した統計値は令和7年速報値・令和8年6月時点の公表内容であり、確定値・年度ごとの見直しにより変更され得ます。対象作業要件・WBGT基準・罰則適用の細則等は政省令・通達により改定される場合があるため、実際の運用にあたっては所轄労働基準監督署および厚生労働省・環境省の最新公表資料を必ずご確認ください。本記事は法令違反の有無や事故防止を保証するものではなく、社会保険労務士・弁護士・産業医・建災防等の専門家との併用をおすすめします。