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脳・心臓疾患・健康起因

建設業の「現場で倒れる」を防ぐ
脳卒中・心筋梗塞に社長が今できる3つのこと

著者: 三宮 孝太(作業療法士・株式会社DIALOG代表)

「いつも元気だったベテランが、ある朝、現場で動けなくなった」。脳卒中や心筋梗塞は、こうして前ぶれなく人を倒します。重機の上、足場の上で起きれば、本人だけの問題では終わりません。

株式会社DIALOG(2026年5月設立)は、作業療法士として23年間、急性期医療の現場で、脳卒中や心臓の病気で倒れた方の回復を支えてきた知見をもとに、北海道の中小建設業に向けた健康経営支援を提供しています。倒れた後に何が失われるかを見てきたからこそ、「倒れる前」に手を打つ意味を、制度と現場の両面からお伝えできます。

本記事では、職人が突然倒れる前に、社長が今できる3つのことを整理します。厚生労働省の資料と、急性期で見てきた現実の両面から読み解きます。読み終えたあとに、「来週、まずこの1枚を見よう」と判断できる材料をお渡しすることが目標です。

この記事の要点

制度の前提: 厚生労働省は、脳・心臓疾患を労災として認定する基準を2021年9月に改正しました。長時間労働だけでなく、労働時間以外の負荷も総合して評価する考え方が明確になっています(出典は記事末尾)。

この記事で考えたいこと

なぜ建設業で「現場で倒れる」が経営リスクなのか

脳卒中や心筋梗塞は、中小建設業にとって、すでに身近な経営リスクです。厚生労働省の令和5年度の集計を見ると、脳・心臓疾患の労災請求は、建設業が全業種の中で上位に入りました(出典:厚生労働省「過労死等の労災補償状況」)。

背景には、現場の高齢化があります。国土交通省の資料では、建設業で働く人の約36.7%が55歳以上です(出典:国土交通省「建設業を巡る現状」)。全産業の平均より高い水準です。

年齢が上がると、血管の病気のリスクは少しずつ高まります。つまり、頼りにしているベテランほど、倒れる可能性と隣り合わせで働いているということです。これは脅しではなく、数字が示している現実だと受け止めています。

急性期の現場で見てきた、倒れた後の現実

私が23年いた急性期医療の現場には、脳卒中で倒れた方が、救急車で次々と運ばれてきました。そこで何度も見てきたのは、発症の前後で人生が大きく変わってしまう現実です。

手足が思うように動かなくなる。言葉が出にくくなる。元の仕事に戻れる方もいますが、戻れない方も少なくありません。倒れてからでは、取り返せないものがあります。

会社の側から見れば、これは一人の熟練が、ある日いなくなるということです。技術も、現場の段取りも、その人の頭の中にあったものが、一緒に止まります。だからこそ、「倒れる前」にできることに、本当の価値があるのではないでしょうか。

制度はどう見ているか——労災認定と特定保健指導

厚生労働省は、脳・心臓疾患の労災認定基準を2021年9月に改正しました。約20年ぶりの見直しです(出典:厚生労働省)。

この改正で明確になったのは、労働時間だけで判断しないという考え方です。長い時間外労働に加えて、不規則な勤務、暑さや寒さの環境、身体への強い負荷なども、あわせて評価されるようになりました。言い換えると、現場仕事に多い負荷が、発症との関わりとして見られるということです。

一方で、倒れる前を支える制度もあります。特定健診・特定保健指導です。40歳から74歳の人を対象に、生活習慣病のリスクが高い人へ、保健師や管理栄養士が生活の見直しを手伝います。2024年度から第4期に入っています(出典:厚生労働省)。せっかくの案内を、現場の忙しさで流してしまうのは、もったいないと感じています。

社長が今できる3つのこと

むずかしい制度を一度に整える必要はありません。今日から動かせる3つのことから始められます。

1つ目は、健診結果の「血圧・血糖・脂質」を放置しないこと。この3つは、血管の病気と関わりの深い数字です。健康診断で所見があった人に、再検査を勧め、結果を一緒に見る場を作ります。労働安全衛生法も、所見があった人への就業上の措置を事業者に求めています。本人任せにしないことが、最初の一歩です。

2つ目は、労働時間以外の負荷を減らすこと。暑い日・寒い日の連続作業、長い拘束時間、一人での重作業。これらは発症の評価でも見られる負荷です。水分と休憩の取り方、作業の分担、無理な工程の見直しを、現場ごとに点検します。安全のための工夫が、そのまま発症予防につながります。

3つ目は、倒れた時の初動を決めておくこと。もし御社の現場で、職人が突然倒れたら、最初の5分で誰が何をしますか。AEDの場所、救急への連絡係、一人作業の見直し。一度声に出して確認しておくだけで、いざという時の結果が大きく変わることがあります。

ここまでのまとめ

※ 産業医がいない50人未満の事業場は、地域産業保健総合支援センターの無料サービスを活用できます。

「健康経営」と構える前に

「健康経営」と聞くと、立派な制度を入れる話に思えて、身構える社長は多いと思います。けれど本質は、もっと手前にあるのではないかと感じています。

今いる人を、倒さずに、長く働き続けてもらうこと。そのために、健診の数字を見て、負荷を減らし、いざという時に備える。この積み重ねが、結果として会社を守ります。認定や仕組みは、その後からついてくるものではないでしょうか。

よくある質問

Q. 健康診断で血圧や血糖に「要再検査」が付いた職人を、本人任せにしていいですか?

A. 本人任せのままにしておくのは、会社にとって安全な選択ではないと感じています。労働安全衛生法は、健康診断で所見があった人に、医師の意見を聞いて就業上の措置を取ることを事業者に求めています。再検査の受診を勧め、結果を一緒に確認する場を作るだけでも、放置のリスクは大きく下がります。産業医がいない場合は、地域産業保健総合支援センターに無料で相談できます。

Q. 脳卒中や心筋梗塞が、仕事との関係で労災になることはありますか?

A. あります。厚生労働省は、長時間労働や強い負荷が血管の病気を悪化させた場合に、脳・心臓疾患を労災として認定する基準を定めています。令和5年度には、建設業からの労災請求が全業種で上位に入りました。倒れた後に「業務との関係」が問われる事態は、中小建設業でも他人事ではないと感じています。

Q. 従業員50人未満で産業医がいません。何ができますか?

A. 産業医がいなくても、できることはあります。従業員50人未満の事業場は、地域産業保健総合支援センターの無料サービスで、医師や保健師に健康相談ができます。まず健康診断の結果から、血圧・血糖・脂質に所見がある人を把握し、その人たちのフォローに絞って動くのが現実的なスタートだと感じています。

Q. 特定保健指導の案内が来ますが、現場が忙しく受けさせられません。

A. 特定保健指導は、40歳から74歳の人を対象に、生活習慣病のリスクが高い人へ保健師や管理栄養士が生活の見直しを支える制度です。2024年度から第4期に入っています。受けさせる時間がないというお悩みはよく分かります。就業時間内に受けられるよう配慮したり、保険者(協会けんぽや健康保険組合)と日程を相談したりする方法があります。

Q. うちの会社で、何から始めればいいですか?

A. まず、直近の健康診断結果から、血圧・血糖・脂質に所見がある人のリストを作ることから始めるのが、無理のないスタートだと感じています。誰を気にかければよいかが、その1枚で見えてきます。あわせて、現場で人が倒れた時にAEDと救急にどう動くかを、一度声に出して確認しておくと安心です。

最後に — 中小建設業の社長へ

脳卒中や心筋梗塞は、運や年齢だけで決まるものではありません。健診の数字を見て、負荷を減らし、備えを整える。社長の小さな判断の積み重ねが、職人が倒れる確率を下げていきます。

DIALOGには、作業療法士23年の急性期臨床で培った「倒れた後の現実を知る目」があります。この目と、産業保健・労災認定の制度の理解の両方を持って、現場の健康管理を伴走します。書類を作って終わりではなく、職人が10年先も働き続けられる仕組みづくりが、私たちの提供価値です。

まずは、健診結果を1枚、血圧・血糖・脂質の目で見直すところから動いてみてください。そこから先のステップは、私たちと一緒に詰めていきましょう。

著者プロフィール

三宮 孝太(株式会社DIALOG代表取締役 / 作業療法士)。作業療法士として23年、急性期医療の現場で患者さんの回復と生活を見てきました。その臨床経験をもとに、現在は北海道で健康経営・介護予防・ウェルネスの支援に取り組んでいます。

詳しいプロフィールを見る

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DIALOGでは、北海道の中小建設業を対象に、健診結果の読み解きから、負荷の見直し・倒れた時の初動づくりまでを一貫して伴走しています。現場の状況を伺ったうえで、貴社に最適な進め方をご提案します。整えた仕組みは、頼りにしているベテランを10年先まで守ることにつながります。「うちの現場で何から始めればいいか」という入口のご相談から承ります。

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参考データ

本記事は、著者(作業療法士歴23年・急性期医療)の臨床経験と、各省庁の最新公開情報を踏まえた解説です。脳・心臓疾患の労災認定基準、特定健診・特定保健指導の運用、建設業の就業者統計等は年度ごとに見直されるため、実際の対応にあたっては各省庁の最新公表資料を必ずご確認ください。本記事は特定の病気の予防や治療の効果を保証するものではありません。具体的な労務・産業保健・医療上の判断については、産業医・社会保険労務士・地域産業保健総合支援センター等の専門家との併用をおすすめします。